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総合出版ゼミに所属している雑誌編集専攻の2年生が、1年次に執筆した自慢のコラムを紹介します。

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2014年9月8日月曜日

奴らはそこまで迫っている

ゴキブリという生き物をご存知だろう。
平たく焦げ茶色で、油を塗ったようなツヤが特徴的な虫だ。別名アブラムシとも言う。子どもから大人まで、「嫌いな虫はなんですか」と尋ねてみれば誰でも真っ先に答えるのがゴキブリだろう。
見かけたら有無をいわず即刻叩き潰す。見ただけで顔をしかめる。名前を口にする物嫌なあれとまでいわれる、嫌われ者ナンバーワンのあの生き物。
彼らはそもそも何故こうも嫌われるのか。
「大量にいそう」「動きが嫌」
「飛ぶ」「見た目が気持ち悪い」
だが、ちょっと待ってみてほしい。私たちは憶測ばかりで、彼らのことをほとんど知らないのではないだろうか。
敵と戦うにはまず、敵を知っておくべきだ。
そこで、ゴキブリの生態について述べてみよう。

第一に、ゴキブリは種類が多い。認知されているだけで3500種いる。日本には52種類が確認されている。家に出るものはそのうちわずか10種のみである。原産国は分からないが、1億年前の化石もある。しかし、ゴキブリよりも古株なのはトビムシだ。日本原産の種類はヤマトゴキブリだ。冬眠するのはこのヤマトと黒ゴキブリのみで、それ以外は冬に休眠せずせいぜい動きが鈍くなる程度。その寿命もバラバラで、主によって一年から数年と、かなりさがある。また、同種でも個体差はある。一様にゴキブリと言っても、全く違うのだ。
生殖機能は人間のそれと似ている。オスは精子を作る精巣、メスは卵子を作る卵巣。受精も体内で行われる。
彼らを外で見かけた人は少ないだろう。それもそのはず、ゴキブリは頭がいい。学者がゴキブリに迷路の実験を行った。奴らはすぐに学習し、最終的にはルートを間違えることなくゴールしてしまった。これは無脊椎動物の中でもかなり成績がいい。が、彼らは覚えたことをすぐに忘れてしまうという習性もあった。また、別の学者がこんな実験をした。塩分を含んだ液体の上にゴキブリを吊るし、足が液体に浸れば電気ショックが流れるというもの。約30分後、足をあげていればダメージがこないことを覚えた。自分の身を守る点においては優れた頭脳を持っていると言えるだろう。もし家に出なければ、ほぼ一般人にはその存在を知らずに生きていくのではないか。
ちなみにゴキブリは脳機能を二つ持っている。頭に大きな神経球と、尾に一つの神経球。これら二つの感覚中枢は最終的に大きな神経組織へ伝わる。感じ取った刺激はゴキブリの端まで0.003秒で到達する。さらにその警戒信号は0.045秒で運動に切り替わる。これは人間の瞬きのスピードを上回る。丸めた新聞紙を振り下ろしても、かすかな風の変化を感じ取ったゴキブリに逃げられてしまうのがオチだろう。しかも自立性のある脳が二つもあるので、頭部を切り離してもしばらくは動いている。首を切断した後、出血多量で死なないよう気をつけていれば数週間は生きながらえ、やがて餓死で死ぬ。

第二に、奴らの半分以上は飛ばない種類だ。
家ゴキの代表とも言われるチャバネゴキブリはオスしか飛ばないし、ヤマトにいたっては全く飛ばない。つまり、退治最中に飛んで顔にへばりつくなんて惨事はあまりないだろう。飛ばないから問いって動きが素早いので言い訳ではないが、こう考えてみると殺虫剤を撒いても少し安心できる。
やつらは雑食だが特に油を好む。が、やっぱり雑食なので何でも食べる。さらに飢餓に強く、恐ろしいことに90日間水のみで生きた個体もある。台所はまさしく格好の棲み家なのだろう。彼らは脱皮をするのだが、その殻ですらすぐに食べてしまうのだ。故に脱皮をすることはあまり知られていない。脱皮直後は体が真っ白になって多少柔らかくなるが、数分で元に戻る。

第三に、彼らは様々な病原菌を持っている。菌を多く持つハエや蚊などと肩を並べて害虫の代表格とうたわれるほどだ。最近では、ゴキブリアレルギーと行った物も確認されている。ゴキブリが多く出る家ほど、子どもは喘息になりやすいのだ。喘息の子どもの約三人に1人が、ゴキブリに対しての抗体を持っていることが判明した。つまりそれほど多くの人が、彼らに影響されているということだ。これに対しては早急に対策を練るべきだ。

これらのことをふまえ、人々は様々な対策をとってきた。その最たる物が殺虫剤の開発・進歩であろう。スプレー型から、ホイホイするもの、ベイト剤(設置タイプ)など種類も多岐にわたっている。しかし、ゴキブリとはなかなか死なない厄介な生き物。これら殺虫剤に対しての抗体も遺伝で受け継いでいるのだ。つまり、これからはスプレーを書けても死なないことが増えてくるということ。そこで人類は新たな技術を駆使する。1980年、とある博士がゴキブリに高レベルのガンマ線を打って生殖機能のみに損傷を起こした。これはいい結果を残したのだが、そこで研究は止まってしまった。また、ゴキブリをなんとか利用できないかと試みたこともある。彼らは震動に敏感である。これを地震野予測に使えないかという研究も行われている。殺虫剤だけではいたちごっこのままだろう。その優秀な機能を生かすというのは実に効率的ですばらしい案だ。
こういった新しい技術を活用するか、より速い動きでゴキブリを叩きのめすか、いっそ慣れるか。いずれにしても、私たちはゴキブリへの認識・対策を考え直す時代に来ているのではないだろうか。

出典:『ゴキブリ大全』著 デヴィット・ジョージゴードン

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